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6.栞の病気に「挫折」はあったのか(栞シナリオ)
「病弱」だが気丈にも「元気」という、面白い取り組みに挑戦したシナリオでした(幽霊氏、旧掲示板)。
お話の「構造」も、自分の死の予感「現実」を受け入れる栞のジュヴナイル、
一月三十一日そんな栞の死の予感「現実」を、ただ、あるがままに受け取めるほかに手がない祐一のジュヴナイル、
「笑って出たはずの涙が止まらなくて…」
「もう、おかしくもないのに涙が止まらなくて…」
「赤く染まった左手が痛くて…」
「自分が、悲しくて泣いていることに気づいて…」
「…そして」
栞「ひとしきり笑ったら…腕、切れなくなってました」
その笑顔が痛かった…。
目の前にある現実を、ただ受け入れるしかない…
そう信じている…栞の心が痛かった…。
祐一「それは、栞の強さだ…」
一月三十一日祐一に対し、栞という存在自体を無視することで、運命「現実」に逆らおうとした、香里のジュヴナイル、
そんな、どうしようもなく滑稽な似顔絵…。
だけど…。
俺はその似顔絵に、ひとりの少女の…。
髪の短い、白い肌の少女の…。
穏やかな笑顔を重ねて…。
そして、最後の言葉…。
『さようなら、祐一さん』
その言葉の意味を、知っていて…。
俺は…。
その場所に崩れ落ちることしか、できなかった…
一月二十三日そして、そのすべてを集約した台詞、
香里「こんなに辛いのなら…最初から…」
香里「最初からいなかったら、こんなに悲しい思いをすることもなかったのに…」
香里の嗚咽の声が、夜の校舎に響いていた。
流れる涙を拭うこともなく、ただじっと泣き崩れる。
妹の前では、決して見せることのなかったであろう姉の涙。
香里「…相沢君」
香里「あの子、なんのために生まれてきたの…」
『奇跡でも起きれば何とかなりますよ』そのどれもが、栞の死を運命としてあきらめ、「現実」として受け入れています。ここまでは、とても丁寧に「失恋」「別離」が描けたと思います。ここで、栞が死ぬ限りにおいては、です。
『でも…』
『起きないから、奇跡って言うんですよ』
香里「だって、栞は…」この一言で、私にとって栞シナリオは救われました。何気ない一言、でも、それが嬉しい。淡々とした書きっぷりに、ライターの底力を感じました。これぞ、『ONE』のシナリオライターのテキストです。私にとっては、栞シナリオを代表する台詞です。
香里「あたしの妹なんだから…」
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